医療法人博友会 就労支援センター アステップむろまち 所長 大石 裕一郎さん
就労支援センターアステップむろまち 大石所長へのインタビュー
Q 大石所長が就労支援を始めたきっかけは?
もともと私はデイケアの仕事に関わっていました。しかし、メンバーの方が回復後、デイケアを退所されて就職しても、困り事等を相談できる場がないなどの理由で、すぐに職場をやめてしまうケースが散見されていました。当時は発達障害に対する理解が広まっていないことや、ご本人が環境の変化に慣れるのに時間がかかることも、職場を辞める原因だったのではないかと思います。
そういった人達を少しでも減らしていくために、今から9年前に就労支援センターアステップむろまちを設立しました。「アステップ」の名前の由来は、“明日へのステップ”。主に発達障害や精神障害のある方が一般就労に向けて一歩踏み出してみることを私たちは支援しています。
Q 就労支援で大切にしていることは
アステップむろまちでは、現在200か所以上、職業体験できる職場を広げています。
その中では失敗した経験も多くありました。例えば、初めのころは職業体験の受け入れ場所とのマッチングはスタッフのみで決めていましたが、ご本人に後から聞くと実は希望する職場ではなかったなどのミスマッチングが発生しました。
これらの反省を活かし、今ではメンバーさん一人ひとりに、希望する職業や意向確認等といった寄り添い支援を行い、できるだけ特性に合った職業体験が出来るようにしています。また、職業体験先企業の担当者に、どのような仕事をされているのかなど、相手の話を伺うことも大切にしています。
また、トラウマを抱えたメンバーさんに対しての支援についても、多くのことを心掛けています。
職場で困ったことがあっても相談に乗ってもらえなかった経験がトラウマになっている方には、この人なら話しやすいなと思ってもらえるように、お互いに信頼関係を築いていくことが必要です。
アステップむろまちでは、就職後の職場定着支援も行っており、以前利用されていたメンバーさんからの相談もよく受けます。相談の多くは、職場の人間関係が上手くいかない、仕事に遅刻してしまうなどの悩みが多いです。しかし、悩みを抱えることを責めるのではなく、これからどう改善すれば良いのか一緒に考えることを心掛けて支援を行っています。
Q 利用者の方の適性はどのように判断しているのか
ワークサンプル幕張版(MWS(ムース))を使用することもありますが、基本的には職員やほかの利用者の方との関係の中で、また職場実習に取り組んでいただく中で適性をご本人と一緒に判断しています。メンバーの方は今までの経験から、本来の強みや能力を生かすことができていない場合が多く、例えば、本当は人と関わることが好きですが、これまでのうまくいかなかった経験から、コミュニケーションを取ることに対してブレーキになっている場合があります。そういった「心の重し」が少しでも軽くなるようサポートすることが、私達職員の大切な役割だと考えています。
*ワークサンプル幕張版(MWS(ムース)):パソコンや事務、実務業務について、自分が何に向いているかを調べることことが可能。客観的なデータに基づいて、能力の向上や苦手業務への対処法も学ぶことができる。