大槻シール印刷株式会社 代表取締役 大槻裕樹さん

聴覚障害のある方を雇用しています

(株)大槻シール印刷 代表取締役 大槻裕樹氏

障害者雇用のきっかけを教えてください。

総合支援学校や聾学校のインターンシップ実習生を数名受け入れましたが,その中で可能性を感じたのが彼女でした。一生懸命頑張るなら雇用しましょうと本人や家族と話し合い,採用が決まりました。

採用の決め手は何ですか?

素直で一生懸命仕事に取り組む姿勢が良かった。課題はありましたが,彼女なら育てていけると思いました。最初から正社員採用です。処遇は他の正社員との差はありません。その分,こちらが彼女に求めるものも高いです。

初めての障害者の雇用で配慮が必要だった点はどんなことですか?

障害への配慮よりも,基本的な社会生活を教えることが大変でした。障害があることで本人や周りの人たちも当たり前の教育を受けることを諦めてしまってきたのではないかと感じました。

採用当初は半分くらいしか出勤できず,4か月程その状態が続いた頃に欠勤の原因を聞くと,体調不良であるのに病院に受診せず,市販薬で対処していること,一人では不安で通院できないことが解りました。社員が病院に同行して通院し,通院出来るまで支援をしました。今では一人で通院し,休まず出勤しています。昼食についても市販弁当ではなく,ご家庭で弁当が作れるようにご家族に依頼しました。
少しずつ料理を覚え,今では毎日弁当を持参しています。金銭管理など,就労に生活の支援は切り離せません。

私は京都中小企業家同友会に加入しており,『障害者問題委員会』に在籍しています。そこでは障害者の雇用を中心に話をしています。中小企業では経営者が社員とパートナーシップを持つことを基本としています。中小企業は常に優秀な人材不足に悩んでいるので,障害があっても必要な能力が高い人に対して,戦力として企業の中で育てていくことも必要ではないか,と委員会で常に話しています。

困った時の相談機関はどこですか?

中小企業家同友会の仲間で障害者雇用の先輩に相談していますが,その他に,会社から本人や家族に直接言いにくい本人の課題について,間接的に伝えてもらえる支援機関を持つことは,双方にとって必要だと思います。

聴覚障害の方を雇用して解ったことはありますか?

再認識したのは,コミュニケーションの大切さです。普段使っていた会話は,相手にはちゃんと伝わっていないことを知りました。10話せば4伝わる程度なんだと。彼女と働くうちに社員が今までよりも言葉を足したり,確認を加える・文書で残すなど,もう一歩踏み込んで人と会話をするようになり,社員同士が丁寧に付き合うことができるようになりました。

手話は,仕事で必要な程度は,社員も自然に覚えていきました。それ以外は口話と筆談で伝わります。
本人にも社会に通用するように,なるべく口話で読む努力をするよう伝えています。

今後彼女に臨むこと

勉強してレベルアップしてくれることを皆で期待しています。期待する分,今まで以上に厳しく指導もしますが,がんばってついてきて欲しいですね。